色恋営業も度を越えれば違法!?

ニュース内容

結婚詐欺で400万円 歌舞伎町ホスト逮捕

歌舞伎町のホストが、女性に結婚をほのめかし、400万円をだまし取った疑い。

荻野嵩貴容疑者(33)は2019年12月、アプリで出会った女性(20代)に、「イベントで返すから、またお金を使ってほしい。1位をとって店を辞める。一緒になろう」などと結婚をほのめかして、勤務先のホストクラブに誘い、シャンパン代など現金400万円をだまし取った疑いが持たれている。

警視庁は、余罪を調べている。

FNNプライムオンライン 2020/10/16 19:46

ニュースにあるよう、結婚をほのめかして、勤務先のホストクラブに誘い、シャンパン代など現金400万円をだまし取った疑いで、詐欺罪(刑法246条)で逮捕されたというものです。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法

ここでホストクラブやキャバクラ・風俗など水商売のお店に行かれる方のなかには、いわゆる「色恋営業」にしてやられただけと思う人もいるでしょう。

そこで今回は、「色恋営業」について法的観点から解説したいと思います。

色恋営業とは

「色恋営業」とは、お客さんと恋愛関係があるかのような疑似恋愛を感じさせる営業・接客手法のことをいいます。

多くは、ホストクラブやキャバクラ・風俗などの水商売で多く用いられる手法です。

このような「色恋営業」すべてが、ただちに法に触れたりトラブルになったりするものではありません。

疑似恋愛であることを理解して、ホストクラブやキャバクラ・風俗などでの時間を楽しむお客さんも多くいるからです。

ただ「色恋営業」も、その具体的な内容次第によっては、本気の恋愛であるとお客さんを誤解させ、今回のニュースのように犯罪やトラブルになることもあります。

以下、法律問題となりやすい「色恋営業」について述べていきます。

法律問題となりやすい「色恋営業」 ~出会いのきっかけが店舗外~

本来、最初の出会いは、お客さんがホストクラブやキャバクラなど実際に店舗に訪れて接客するタイミングであるのが大半のケースです。

そこで接客のなかで連絡先を交換し合うなどして、自らを目当てにお店にリピートしてもらえるようやり取りすることでしょう。

そのやり取りにおいては、お客さんも店舗に訪れている以上、基本的にはそれが色恋営業である可能性は知り得る状況にはあるといえます。

しかし近年は出会いのきっかけが、出会い系アプリや出会い系サイト、TwitterをはじめとしたSNSなどネットであることが増加しています。

もちろん自らがホストやキャバ嬢・風俗嬢であることを公表して、純粋に営業目的でネットを利用し、それに興味を示したお客さんが来店したというのであればまず問題はありません。

一方で、自らの職業を隠したりなどして、さも恋愛目的や婚活目的で利用しているかのように装い、やり取りのなかで相手方に恋愛感情が芽生えてきたと感じるや否や、何かしらと理由をつけて店舗に誘い込んでお金を使わせるような場合は問題となり得ます。

相手方は、実際は色恋営業の目的であったことを知らないままに、恋愛や婚活が成就すると誤信して、ホストクラブやキャバクラなどでお金を支払う結果となりうるからです。

逆に言えば、色恋営業の目的であることを知っていれば、お金を支払うこともなく、ましてや恋愛感情すら芽生えなかったといえるだろうからです。

このように出会いのきっかけが店舗外であり、実際は色恋営業の目的であることを隠している場合には、今回のニュースのように詐欺罪をはじめとした法律問題となる可能性が高いということになります。

具体的には、詐欺罪とまでならない場合であっても、民事上の不法行為(民法709条)として損害賠償請求や、不当利得(民法703条)として返還請求の対象と十分なり得ます。

なお出会いのきっかけが店舗であったとしても、色恋営業が疑似恋愛を越えて本気の恋愛と思わせるような場合には、同様の法律問題となり得ます。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法

(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

民法

その他の法律問題となりやすい「色恋営業」

「色恋営業」においては、当初はお客さんも疑似恋愛であることを理解していたとしても、そのやり取りの内容や過ごした時間の密度によっては、本気の恋愛に変わったと思われても仕方がないと言わざるを得ないことがあります。

また疑似恋愛のままの状況であったとしても、関係が深くなるにつれ、お客さんの好意が増すこともあるでしょう。

そのようなお客さんが恋愛感情や好意を持ってくれていることをいいことに、誕生日やイベントでプレゼントやシャンパンなどお金を使ってもらうだけならともかく、お金に関することにウソをつくと法律問題となってくる可能性があります。

よくあるケースが、親や兄弟が病気になったけれども入院費や治療費が支払えない、専門学校や大学の学費が足りないなどのウソの話を持ちかけるケースです。

そしてこれらのようなウソにより、お客さんに贈与であれ貸与であれお金を出させると、上で述べたような詐欺罪や民事上の損害賠償請求や返還請求の対象となり得ます。

したがって「色恋営業」において、お金に関するウソをつくことはNGといえます。

度を越えた「色恋営業」への対応

今回のニュースで考えると、勤務先もわかっているので、対応方法としては「自らで対処」「警察に相談」「弁護士に相談」の選択肢があるかと思います。

まず自らでの対処は、騙された憤りから感情的に問い詰めるだけになってしまいがちで、なかなか冷静な話し合いとならないのでオススメはできません。

相手としても、何とか言いくるめようとしてきたり、場合によっては行方をくらますなど逃げられるケースもあります。

次に下記記事でも紹介していますが、警察への相談も初手の行動としてはあまり効果的ではありません。

なぜなら結婚詐欺(婚活詐欺・恋愛詐欺)については、痴情のもつれとみられたりなど多くが民事不介入を理由に刑事事件として処理してくれる可能性が現実問題として低いからです。

ただし同じ相手方で複数の被害届が出ていた場合は、捜査が進められることもあります。

したがって、まずは弁護士に相談することがベターといえるでしょう。
詳細については、下記をご覧ください。

他方、お金に困っているとの話が出てきた場合には、工面してあげるかどうかは慎重に判断すべきです。

もっとも恋愛感情や好意から、慎重な判断自体が行える状況ではないこともありえるでしょう。

その際は少なくとも、贈与するのではなく貸与というかたちをとるのがベターです。
(貸与後、返してもらわなくていいとなれば免除することで、実質的に贈与とすることが可能です。)

もしウソであった場合、贈与ではなく貸与としている方がまだ金銭を取り返しやすいからです。

なお貸与する際には、下記記事にある借用書を記載してもらうことは忘れないようにしましょう。

最後に、色恋営業でお悩み・お困りの方は、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。